どのくらい経っただろうか。
試合の行方を見守っていた俺は、太腿に違和感を覚えてハッとした。
気がつくと、茂野の手が俺の腿に乗っている。
だが、アイツの視線はグラウンドに向けられたまま。
「おい、人の腿に手を置くんじゃねぇよ」
「いいじゃん別に。ただ置いてるだけだし。どこに置こうと俺の勝手だろ?」
いけしゃぁしゃぁといい放つ。
なんとなく反抗する事もバカらしくなってそのまんまにして、視線を再びグラウンドに戻す。
それはいいんだが……一度気になっちまうと、腿に置かれた手が気になって気になって……しかも少しでも動くと股間に当たりそうで、なんともいえない嫌な緊張感が漂う。
「なぁ、やっぱ離せよその手」
「あっれぇ? もしかして置いてただけで感じたのか?」
「んなっ!? バカッ違うっての!!!」
咄嗟に大きな声を出しちまって、慌てて口を塞ぐ。
みんなの視線がいっせいに俺のほうを向いてすげぇ恥ずかしい。
「茂野のせいだぞ!」
「俺は何もしてねぇじゃん。ただ手を置いてただけだ」
「だから、それが余計だってんだよ!!」
小声で会話していると茂野がムフフっと笑った。
「お前、なんで俺にそんなにちょっかい出すんだよ。迷惑だから止めろ」
「何でって……うーん、暇つぶし、かなぁ。薬師寺の行動面白いし」
全然懲りてないアイツはニッっと笑ってそう言った。
「人を玩具にして遊ぶな!!!」
持っていたボールを思いっきりぶん投げて、ちょうど見回りに来た監督に見つかってまた散々説教されるハメになった。
くっそ、覚えてろよ! 茂野!! いつか仕返ししてやるっ!
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