「よぉ、いいご身分だな。 俺と会うのキャンセルしてどんな大事な用があるのかと思ってたら、女と合コンかよ」
「!?」
乾杯の後、和気藹々とした雰囲気になり空気が和んできたのを見計らって、俺は眉村の肩を叩いた。
俺の顔を見た瞬間、眉村はまるで狐にでもつままれたような表情をして思考が停止しているような感じだった。
「……なんでいるんだ?」
まず、第一声がこれだった。
「いちゃ悪いか? お前が合コンしてるって聞いて確かめに来たんだよ」
沸々と込み上げてくる怒りを必死に抑え、声を押し殺す。
それなのに眉村は平然とした様子で「そうか」とだけ呟くと、注文したウーロン茶に口をつけた。
「……それだけかよ」
「なんだ? まだ何かあるのか」
「……っ!」
場の雰囲気を壊すなと言わんばかりの表情に、俺はもう我慢の限界だった。
「……すみません、原田さん。俺、ちょっと用事が出来たので先に失礼します」
「なんだよ、もう帰るのか?」
「えぇ。 ホント、すみません。 代金は後で払いますから!」
あんな軽薄男と同じ空気を吸っているのも嫌で、とにかく早くこの場から出て行きたくて挨拶もそこそこに店を出た。
なんだよ、アイツ。
久々に会って、それがあんな現場で……。
普通、謝罪の一つくらいあってもだろう?
何か事情があるなら、言い訳くらいしてくれたっていいじゃねぇか。
勢いよく店を飛び出して、人の波に逆らいながら行くあてもなく突き進んでいく。
高校卒業しても、想いはずっと変わらねぇ。
そう思ってたのはどうやら俺だけだったらしい。
最後に会ったあの日から約半年。
半年の月日はこうも簡単に人の気持ちを変えてしまうものなのか。
俺、バカみてぇ……いつまでもガキみたいな恋愛ゴッコやって……。
ふと立ち止り空を見上げると、今にも泣き出しそうなほどどんよりとした分厚い雲が一面に広がっていた。
「ホント……馬鹿だよ。俺……」
込み上げてくる切なさに唇をギュッと噛み締める。
胸が苦しくて鼻の奥がツンと痛くなった。
前/ススム