眉薬 他
LoveSick
「あ、あれ! 眉村君じゃない?」
「ホントだ〜、ホントに来た!」
ザワッ、と周囲がざわめいてみんなの視線が一点に集中する。
”眉村”というその単語に、息が詰まりそうになりながら反射的に俺も顔を上げた。
「すみません、遅くなりました」
聞きなれた声、見慣れた姿。
こういう時ですら、周囲の視線を集める圧倒的な存在感。
信じられない。
出来る事ならこれが夢であって欲しいと思う。
受け入れがたい現実に、急に目の前が真っ暗になり軽い眩暈を覚えた。
「ほらな、アイツ来るって言ったろ?」
「……」
隣りに座った原田さんがこっそりと耳打ちしてくる。
腸が煮えくり返り、今すぐにでも張り倒してやりたい衝動に駆られたが、頭に血が上りそうになるのを必死に堪えた。
アイツはそんな俺に気が付く事無く、俺と反対側の奥に座る。
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