原田さんは俺の動揺に気が付く事なく、思い出したように本題に入った。
「実はさ、今夜野球仲間と合コンするんだけど、メンバーが一人たりないんだ。 お前ならルックスもいいし、女の子たちも喜ぶんじゃないかと思って」
「折角誘っていただいたのは嬉しいですが、俺そう言うのってあまり興味がなくて」
先輩である原田さんの頼みを断るのは気がひけたが、気が乗らないのは事実だ。
「かたいこと言うなよ。 他のチームのヤツも来るし、結構楽しいぜ?」
「すみません。やっぱり俺は……」
「たくっ、付き合い悪いなー、お前。あの眉村なんか声掛けたらすげぇ乗り気で、ソッコーOKらしいぞ」
「え?」
原田さんの口から聞きなれた名前が出て、聞き間違えたのかと一瞬思った。
「ちょっ、原田さん! 眉村がOKするって、冗談ですよね?」
冗談に決まってる! だって、アイツが合コンにノリノリで参加してる姿なんて想像できねぇ。
いや、想像したくねぇよ。 そんな姿。
祈るように尋ねた俺の言葉に返って来たのは衝撃的な発言だった。
「そういや、お前と眉村ってチームメイトだったな。 アイツは誘えば100%来るって噂。 俺も何回か会ったぞ。」
「……嘘だ……だってアイツは……」
アイツは俺の恋人だ。
喉元まで出掛かった言葉を慌てて呑み込み、震える手で拳を作る。
「嘘か本当か、来て見ればわかるって」
原田さんの声を何処か遠くのほうで聞きながら俺の心の中にアイツへの猜疑心が広がってゆく。
俺に会えないってのは、合コンしてるからだったのか。とか、
過去に縛られてたのは俺だけで、アイツにとっては俺はもう過去の男だったのか。とか……。
色んな思いが頭の中をぐるぐると回っていた。
前/ススム