「おい、起きろ。薬師寺」
聞き覚えのある声がする。
「……」
ゆさゆさと、揺り起こされて、重たいまぶたを開けばそこには遠征中のはずの眉村が顔を覗かせていた。
あれ?
俺、まだ夢の中?
きょとんとしている俺に目の前の男はプッと吹き出した。
「何がおかしい」
「いや、そんなに寂しかったのか?」
視線の先には、俺が思いっきり抱きついてるアノぬいぐるみ!!
「だぁっ! ち、違うッ! 別に寂しかったわけじゃ!!」
顔中から火が出そうなほど熱くて、俺は枕に突っ伏した。
すっげー恥ずかしすぎる。高校生にもなって、朝までぬいぐるみ抱っこして寝てたなんてー!!
ありえねぇ。
ちょんちょんっと、俺の肩を眉村がつつく。
顔をほんの少し上げると、ぬいぐるみが目の前にあって、俺の唇に触れた。
な、なんのつもりだ!?
きょとんとしてる俺に、今度は眉村が触れるだけのキスをする。相変わらず、わけわかんねぇ。
そんな俺の心を見透かしたのか、ほんの少し口元が緩んでいる。
「さっきのが、ダミーのキス。今のが本物の俺のキス。どっちがいい?」
ったく、恥ずかしいことしやがって。
そんなの……決まってんだろ?
「しょうがねぇから、本物って言っといてやるよ」
「ふっ。相変わらず素直じゃないな」
「煩い」
ベッドが軋む音がして、眉村がそっと近づいてくる。
自然と、恥ずかしさから頬は赤くなってんだろうな。 身体が熱い。
心臓もバクバク言って、眉村の顔を見るのが恥ずかしくて俺はきつく瞳を閉じた。
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