「てっめー!薬師寺、今のぜってぇわざとだろ!!」
「てゆーか、お前が佐藤に言いそうになったからだ!」
「なんだよ、俺が悪いってのか!?」
「当たり前じゃねぇか!」
「悪いのは、こんなとこでイチャついてるおめぇらだろ!?」
ギャーギャーと喧嘩を始めた二人の横で、眉村は深いため息をついた。
「なに? なんか僕、展開についてってないんだけど」
「気にするな。大したことじゃないから」
茫然として二人の喧嘩を見つめる寿也の肩に、眉村はポンッと手を置いた。
「とりあえず、コレ止めないと」
「そうだな」
冷静な二人は、それぞれのパートナーをがっしりと掴まえて喧嘩を中断させる。
「まったく、何をムキになってるんだ。薬師寺。」
お前らしくないな。
そう言われ、ムッとする。
(キスシーン目撃されて、それを暴露されそうになって、落ち着いてるお前のほうがどうかしてるっ)
「あまり興奮すると、のぼせるぞ」
ふーっと、ため息をつかれて、今まで大騒ぎだった浴室が一気に静かになった。
「あがるか、薬師寺」
すっと差し出された手に触れようとして、吾郎がにやけながら見ていることに気がつき、慌てて手を引っ込める。
「いい。一人で行くから」
「なんだよ、俺たちに構わずイチャつけばいいじゃねぇか」
「てめぇ、茂野!もう一回沈められたいか!?」
キレそうになる薬師寺を眉村は引っ張り、浴室を後にした。
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