眉薬 他
LoveSick
それが、恋人の眉村であるとわかりホッとしたが、彼は、薬師寺と目が合っても表情ひとつ変えずに、自分の道具だけ置いて、出て行こうとする。
「おいっ! 助けてくれないのか?」
「助ける? そのくらいのヤツ自分でなんとかしろ」
眉一つ動かさずに、冷たく言われ茫然とした。
肩が震え、怒りの感情がふつふつと湧き起こる。
「よかったじゃねぇか、邪魔者も消え――ブッ!!」
緊張感の無いその顔に顔面パンチを食らわせ、ついでに腹蹴りまでして阿久津をノックアウトした後、去っていった恋人を追いかける。
(なんだよ、俺達付き合ってたんじゃなかったのか!?)
バンッと勢いよくドアを開けると、いつもと変わらない眉村がいて、キッと睨みつけた。
「どうした。怖い顔して?」
「おい、眉村! なんで助けてくれなかったんだ!」
「なんだ、その話しか」
興味なさそうな彼の態度に、ムッと来て、自分の上着を投げつける。
「なんだ。じゃ、ないっ!! 普通付き合ってんなら、恋人のピンチの時くらい助けろよ!!アイツ気持ち悪かったんだからな!!」
驚いている彼の横を通り過ぎ、自分の着替えを用意すると、もう一度睨み付ける。
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