今は、練習のストレッチの時間。
「うぉー、重いんだよ市原!」
「悪い。薬師寺が軽すぎるんじゃないのか?」
背中合わせで、背筋を伸ばすストレッチ。
市原の野郎。
俺の薬師寺と背中つけて、さらに腕なんか組んで!
「そうだよ! 薬師寺ちゃんと飯食ってる?」
「は? 食ってるよ。俺は普通だ」
「そうかなぁ? 腰とかさ、すっげぇ細すぎだし」
「馬鹿、くすぐったいって。渡嘉敷」
何さりげなく腰掴んでんだ。
薬師寺に触っていいのは、俺だけなんだ!!
俺は、今すぐにでも乱入してやりたい気分をグッと堪えて、その様子を伺っていた。
練習が終わった後、俺達は着替がえて次の練習試合のミーティングに入る。
この時間だけは堂々と隣に座れる。
やっぱり綺麗な顔してるなぁ。
俺の耳には他の雑音は入ってこなくって、視線もずっと薬師寺に釘づけ。
コロコロっ
不意に、薬師寺が消しゴムを床に落とした。
それはどんどん転がっていって、あろう事か阿久津の下に。
それを拾おうとした薬師寺と、阿久津の手が触れ合った。
「離せよ」
「あっ、悪い!」
阿久津!!!!
何見詰め合ってんだ!
汚い手でさわるな!!!
あまりにもムカついて思わずシャーペンをへし折りそうになった。
どいつもこいつも、薬師寺にベタベタ触りやがって!!
アイツは俺のモンなんだ!
薬師寺も、もっと他のやつらを警戒しろ。
今だって、市原とか、渡嘉敷とか、みんなお前のことばかり舐めるように見てるんだ
ぞ!
許せん。
前/ススム