チッチッチッ
時計の音がやけに耳に響く。
頭の上に手を延ばし触れた目覚まし時計のディスプレイを見つめると吾郎君は本日幾度めかのため息をついた。
……眠れねぇ。
時間ばかりが刻一刻と過ぎてゆく。
草木も眠る丑三つ時とはよく言ったもので、辺りは不気味なほど静まり返り、つい一時間ほど前まで心地よい音色を奏でていた秋の虫たちの声も今は聞こえない。
(畜生……っ寿也の野郎があんな事を言うからいけねぇんだ)
自室の天井を見上げ吾郎は再び緩く息を吐く。
聖秀へ編入して最初の土曜日。
ぽっかりと空いてしまった時間の中で、久々に寿也に電話をかけようと思い立った。
夏休み中はバイトが忙しく、編入してからも前途多難な学校生活。
気がつけば、編入先が決まったら連絡すると言ったっきり音信不通のままだった。
聖秀と言う元女子高へ編入したと言ったら一体どんな反応が返ってくるのだろうか?
ドキドキしながら、相手が出るのを待つ。
「もしもし、吾郎君」
久々に聞いた、その声は弾んでいて、かけてきた自分に対して喜びを露わにしているのがわかり、妙な気恥ずかしさに襲われた。
しばらくは何気ない会話のやり取りを交わし、お互いの近況報告をする。
あまり長電話はするタチではないのだが、久々に会話できたのが嬉しくてついつい暗くなるまで話し込んでしまった。
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