「吾郎くん! 一緒にご飯食べよう」
「茂野! 今日は俺とだ!」
夕方恒例のミーティングも終わり、夕食を食べに来た吾郎に声がかかる。
「なに言ってんだい。吾郎くんは僕と夕飯食べる約束だったんだよ?」
「そんな事俺が知るか。お前は昨日も今日の昼も茂野と食事していたじゃないか。たまには俺に譲れ!」
左右の腕をそれぞれに掴まれていがみ合いを続ける二人に吾郎はうんざりと溜息をついた。
「あのなぁ、お前ら……飯くらい三人で食えばいいじゃねぇか」
「よくないよ。僕は君と二人で食事したいんだ」
「そうだ! 佐藤と食事なんかしたら美味い飯もまずくなる」
口々にいいながら二人の間にバチバチと火花が見える。
(たかが飯を食うくらいで大げさな)
毎回のようにどちらが一緒に食事をするかで揉める二人。
食事だけじゃなく、事ある毎に衝突する彼らに最近は鬱陶しさすら感じていた。
「たくっ、何でそんなくだらねぇ理由で喧嘩するんだよ」
小学生じゃあるまいし。
呆れモードの吾郎を他所に二人の睨みあいは続いている。
「くだらなくなんか無い。 大体吾郎くんが僕らに曖昧な態度を取るからいけないんじゃないか!」
「はぁ!? 俺かよ」
苛々の矛先が吾郎のほうへ向き、眉村まで「そうだぞ!」などと相槌を打つ。
どっちが好きなのかと尋ねられ吾郎は困ってしまった。
「それは今ここでする話じゃねぇだろ」
「またそうやってはぐらかして……。僕と眉村、どっちか好きなのかはっきりしてくれなきゃ困る」
グイッと顎を持ち上げられ間近に寿也の顔が迫る。
視線を逸らそうとするがそれは叶わず、思わず息を呑んだ。
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