「よぉ、これからちょっとでかけねーか?」
練習が終って一息ついた頃、突然茂野がそう切り出してきた。
これから部屋で読書でもしようかと思っていたんだが、茂野が俺を誘うなんて事滅多にある事じゃない。
悩んだのはほんの一瞬で、取り合えずついていく事にした。
「ところで、何処に行くんだ?」
俺がそう尋ねても、
「いきゃーわかるって」
としか言わず、困惑する。
妙に嬉しそうな顔をしているから、楽しいところに行くのだろうと言うことは想像がついた。
「何やってんだよ、早く来ね−と置いてくぞ!」
「あぁ、今行く」
外出届を提出し、相変わらず行動の読めないアイツの後をついていく。
バスに乗り、二つほど行った先で降りると、その場の光景に唖然とした。
「な、なんだこの人ごみは!?」
「なに、って祭りに決まってんじゃねーか」
沿道には沢山の縁日が立ち並び、焼きとうもろこしや、焼きそばなどの美味そうな匂いが漂ってくる。
「それは、見ればわかる。 そうじゃなくて、たかが祭りでこんなに人が集まるものなのか?」
「なに、もしかしてお前……、祭り来たことねぇの?」
「馬鹿にするな。来たことくらいある」
もう遠い昔……、俺が小学生くらいの話だが……。
もともと、あまり人ごみが好きではなかったし、祭りが楽しいと感じた経験もない。
だから余計に、記憶に残っていないのかもしれない。
「へっ、まぁお前は、率先して縁日とか行くようなタイプじゃねぇよな。そうだ、俺が縁日の楽しさを教えてやるよ!」
「あっ、おい!」
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