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「みんなー、準備はいい?」
バッツオーナー代行アリスの、暢気で明るい声が車内に響く。
「おー!!」
それに呼応するように、男達の野太い声が返ってくる。
「あーぁ、なんで野郎ばっかで海に行かなきゃなんねぇんだよ」
爽快に風を受け走り出したバスの中、吾郎は盛大なため息を吐いた。
「なんだよ、シケた面して〜、たまにはいいだろ? 俺たちにも休みは必要だって」
通路を挟んで向かいに座るロイが、トランプ片手に吾郎の顔を覗き込む。
車内からは陽気な音楽が流れ、みなすっかり休日モードに突入していた。
珍しく開いた三連休。なにを思ったか頑張っている選手たちへと称して、オーナー代行である彼女からプチ旅行が提案されたのだ。
「どうかしたのか? 元気ないみたいだが」
「別に、なんでもねぇよ」
隣に座るサンダースの問いかけに対し曖昧に答えると、一度だけ斜め前の席を一瞥し再び窓の外に視線を移した。
別に旅行自体が嫌なわけじゃない。
休むのも、リフレッシュする事も悪くないと思う。
だが、吾郎には手放しで楽しめるような気分になれない理由があった。
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