154/154


「お疲れ! なぁ、これから食べに行かないか?」

試合後、更衣室で着替えているとロイがそう声を掛けてきた。

「お、いいね。行く行く♪」

「悪いが、俺は遠慮させてもらう」

みんなが盛り上がる中、静かにキーンがそう言って鞄を担ぐとさっさと更衣室を出て行ってしまう。

「なんだよアイツ。付き合い悪いな……」

「最近特に、だよな。まぁ元からワイワイ騒ぐようなヤツじゃないけど」

「もしかして彼女が出来たとか?」

誰かの一言で、その場にいたみんなの動きが一瞬止まった。

キーンに彼女?

「まさか! それは無いだろ」

思わず大きな声を上げてしまい、俺は慌てて口を塞ぐ。

「なんだよシゲノ〜。急にでかい声だして。びっくりするじゃねぇか」

「悪い、悪い。キーンの彼女がどうとか聞こえたからちょっと、な」

アイツに彼女なんて出来る筈がねぇ。

だって、アイツと付き合っているのは俺だし。

いや、正式に告られたわけでも付き合おうと言われたわけでもないから、恋人面するのはおかしいか。

でも、アイツに彼女なんて……。

確かにここ一カ月くらいは飯に誘われたり、アイツに呼び出される日が少なくなったよな。

以前は毎日なんだかんだで一緒に居たのに。

つか、マジで彼女が出来たのか!?

他のメンバーの話題が何を食べるかに変わり、ワイワイと盛り上がっている中、俺の胸の内に湧いた不安はみるみるうちに大きくなっていく。

「なぁ、シゲノは何食いたい?」

「悪い! 俺、ヤボ用思い出したから今夜はパスな!」

居ても経っても居られなくなって適当に鞄をひっつかむと、ロッカールームを飛び出した。


*PREV NEXT#

Bookmark


 

List Top

Menuへ戻る


人気急上昇中のBL小説
BL小説 BLove
- ナノ -