「お疲れ! なぁ、これから食べに行かないか?」
試合後、更衣室で着替えているとロイがそう声を掛けてきた。
「お、いいね。行く行く♪」
「悪いが、俺は遠慮させてもらう」
みんなが盛り上がる中、静かにキーンがそう言って鞄を担ぐとさっさと更衣室を出て行ってしまう。
「なんだよアイツ。付き合い悪いな……」
「最近特に、だよな。まぁ元からワイワイ騒ぐようなヤツじゃないけど」
「もしかして彼女が出来たとか?」
誰かの一言で、その場にいたみんなの動きが一瞬止まった。
キーンに彼女?
「まさか! それは無いだろ」
思わず大きな声を上げてしまい、俺は慌てて口を塞ぐ。
「なんだよシゲノ〜。急にでかい声だして。びっくりするじゃねぇか」
「悪い、悪い。キーンの彼女がどうとか聞こえたからちょっと、な」
アイツに彼女なんて出来る筈がねぇ。
だって、アイツと付き合っているのは俺だし。
いや、正式に告られたわけでも付き合おうと言われたわけでもないから、恋人面するのはおかしいか。
でも、アイツに彼女なんて……。
確かにここ一カ月くらいは飯に誘われたり、アイツに呼び出される日が少なくなったよな。
以前は毎日なんだかんだで一緒に居たのに。
つか、マジで彼女が出来たのか!?
他のメンバーの話題が何を食べるかに変わり、ワイワイと盛り上がっている中、俺の胸の内に湧いた不安はみるみるうちに大きくなっていく。
「なぁ、シゲノは何食いたい?」
「悪い! 俺、ヤボ用思い出したから今夜はパスな!」
居ても経っても居られなくなって適当に鞄をひっつかむと、ロッカールームを飛び出した。 |