久しぶりに寿也と二人で外へ出た。
きっかけは、偶然部屋に流れていたニュース。
なんと最近、県内にも蛍が見れるスポットが増えてきているらしい。
「行ってみようか、蛍を探しに」
ぶっちゃけ面倒だったが、寿也がどうしても見たいと言うので練習が終って外出許可を貰った。
いくら日が沈む直前とはいえ、日光を吸収し熱せられたアスファルトの照り返しはかなりのものがある。
下から立ち上る熱気で、頬を撫でる風も生ぬるく感じ、じっとりと汗が吹き出してきた。
「おい、蛍なんかマジでいんのか?」
「いるよ。きっと……、ニュースでやってたの君も見ただろ」
俺の少し前を行く寿也は、真剣に蛍を探すつもりらしい。
蛍なんて――、もう何年も見てねぇ気がする。
もしあったとしてもそれは遠い昔、おとさんがまだ生きていた頃の話だ。
当てもなく探したって、そう簡単に見つかるわけねぇじゃねぇか。
確か蛍は綺麗な水辺でしか成育できねぇって聞いたことがある。
今俺たちの隣りを流れる小さな川は、空き缶やゴミが散乱していてとても蛍が生きていけるような環境じゃないはずだ。
「もう少し、別の場所を探してみよう」
「えーっ、まだ探すのかよ」
面倒くせぇ。
そう呟いた時、一瞬寿也の表情が曇った。 「?」
「いいから、早く行こう」
「あっ、おい!」
スーッと先に行こうとする寿也を慌てて追いかける。
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