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君は、ある日突然僕の前にやってきた。
吾郎君は、僕の初恋の相手。
まだ5歳だったけど、とても僕と同じ歳とは思えないほど純粋でまっすぐな瞳で僕を見てた。
僕に始めて野球を教えてくれた人。
吾郎君にとっては、野球できる友達が出来たのが嬉しかったんだろうけど、僕は野球より君に会いたくってキャッチボールしてたんだ。
太陽みたいに笑う吾郎君は、僕にはまぶしすぎる存在だった。
今まで、ただ親の言うことを聞いて、有名な小学校に入るため塾に通い、勉強漬けの毎日。
両親は共働きで、家にいつも一人ぼっちで、勉強に飽きたらゲームをする。
締め切ったカーテンの隙間から洩れる、太陽が僕には恨めしかった。
閉鎖された空間に、突然舞い降りた天使。それが吾郎君だ。
君といられることが本当に嬉しくって、一緒にいると僕はいつもドキドキしていた。
でも、コレが恋だってその時の僕は知る由もなくって。
一緒にいられることだけが楽しみだった。
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