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その日、吾郎はなんだか背筋がゾクゾクするような感覚に襲われていた。
「うー。なんか、誰かに見られてるような気がする」
視線を感じて後ろを振り向くが、誰もおらず首をかしげる。
放課後、教室を出てからずっと何か言いようのない気配がしていた。
「どうしたんだ、茂野? 顔色悪りいぞ」
ロッカーで着替えていると、藤井が声をかけてきた。
「いや、なんかよくわかんねぇけど、全身を誰かに舐められてるような、そんな感じがすんだよ」
「はぁ? 風邪ひいてんじゃねぇのか、茂野?」
吾郎の額に藤井が手を当てる。
どうやら熱はなさそうだ。
「今日は、練習休めよ」
「平気だって。悪寒だけだし」
「あんま、無理すんな」
「ああ。わかってるよ」
ロッカー室に二人の声が響いている。
しばらくして、二人は屋上へ向かった。
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