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夜空を見上げると、分厚い雲の隙間から綺麗な三日月が顔を覗かせる。

ここ数日雨続きだったせいもあり、星が手に取るようにはっきりと見えた。

「――綺麗だね。 今夜は特に、星が近く感じる」

「そうだな……あのさ、寿……」

「ん? なんだい?」

視線を移すと、吾郎君は徐にポケットから小さな箱を取り出して僕の手元に放り投げた。

「それ、やるよ。ちょっと早いけど……明日、誕生日だろ?」

ほんのり頬を朱色に染めて照れくさそうに頭を掻く。

そんな彼が可笑しくて、僕は思わず吹き出してしまった。

「なっ……んだよ、人が折角……っ」

「ハハっ、ゴメンゴメン。照れてる吾郎君があまりにも可愛かったから、つい……開けてもいいかい?」

僕の言葉に、吾郎君はコクリと頷く。

それを確認して箱を開けると、中には小さな銀のスプーンが一つ。

「え……吾郎、君……?」

こ、これはどうリアクションしたらいいんだろう?

一瞬迷いが生じた。

「あんだよ。嬉しくねーのか?」

リアクションが遅れたのが気に入らなかったのか、眉間に一本皺が寄る。

「嬉しいよ。もちろん……。だけど、どう反応していいのかわかんなくて……」

「別に、嬉しかったら素直に喜べばいいじゃねぇか」

「それは、そうなんだけど……なんで僕にこれを?」

「なんでって……、誕生のプレゼントに銀色のスプーンを送ると幸せになれるって書いてあったから……」



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