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一方その頃、寿也の部屋では。
「僕ジュース持ってくるから、ゆっくりしといてよ」
「ああ、別にいいっすよ。お構いなく」
大河の言葉に、寿也はピタリと足を止める。
口調といい、行動といい……全てが別人のようだと寿也は思った。
「……吾郎君、本当に、吾郎君だよね?」
「えっ!? お、おう当たり前じゃねぇか。なに言ってんだよ」
冷や汗が額から伝ってくる。
寿也は大河の横に座りなおし、ジッと彼を見つめた。
「あ、あんだよ?」
「キスしよ?」
「へっ? あ……」
(ええっ!? ど、どうすんだよっ、これって先輩の日常なわけ!?)
どんどん迫ってくる彼に大河は思わず顎を引いた。
それは無意識の行動で、それによって寿也はこれが別人であると確信した。
「ねぇ、君は誰?」
「な、何言ってんだよ!? お、俺は茂野吾郎に決まってんだろ?」
「じゃぁ、いつもどおりに僕のこと呼んでみなよ」
そう言われ、言葉に詰まる。
吾郎が二人っきりの時に彼を何て呼んでいるかなんて、そんなの知るわけがない。
「僕も、前に吾郎君と入れ替わったことがあるから、わかるんだよ。君は一体誰?」
「お、オレは……」
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