翌朝、大河は早くに目が覚めた。
自分のパジャマがどうにも窮屈に思えて首を傾げる。
ボーっとした頭で考え、自分の願い事を思い出し、吾郎が寝ているであろう布団を捲った。
「ん……寒い」
そこには、だぼだぼのパジャマに身を包んだ自分が寝ていて、大河は目を丸くした。
これは、夢? それとも現実?
思わず寝ている吾郎、もとい自分の頬をぎゅっとつねってみた。
「うっ、ってぇ」
顔をしかめた様子を見て、夢ではないことを確認。
吾郎は呻いた後、またすやすやと眠り始めた。
(自分見てるってなんか不思議な気分だな)
マジマジと見つめて、ふぅっとため息が洩れた。
とりあえず着替えを済ませ、リビングへ行くと桃子が朝食の準備をしていてドキッとした。
「あら、吾郎はやいのね」
「たまには、早起きしないとな」
バレないかドキドキしながら、洗面所へ行き鏡を見つめる。
(うっわー。マジで先輩だ)
鏡に映る自分の姿はまさしく吾郎で、顔を洗って目を覚ましたあとでもやはりそれは変わらなかった。
背の高い人物と入れ替わる。
大河は改めて辺りを見回し180cmの世界を実感した。
いつもの目線より高い位置からの光景はみていてワクワクした。
「あんた何やってるの? 今日は寿也君と遊びに行くって言ってたでしょ?」
「と、寿也君……寿也って、あの佐藤寿也っすか、おばさん!?」
「だーれが、おばさんよ! だれが!」
つい焦って、素の自分が出てしまい、桃子に頭をげんこつでグリグリとされる。
「ひぃ、痛てぇ!!」
「とにかく、早く朝ごはん食べないと、約束の時間に遅れるわよ」
(先輩が会う約束してるが、あの佐藤先輩って、知ってたら絶対変わったりしなかったのに!!)
これは、今日一日ばれないように気をつけていないと、後々大変なことになるぞと、大河は大きなため息をついた。
朝食後着替えを済ませ、家を出る。自分の靴をはこうとして思い出し、気分も暗く玄関を開けた。
たぶん、相手はデート気分満々で来るのだろう。
「どうしようかな、僕……」
吾郎と、寿也がどこまでの関係にあるのかは知らないが、よくないことが起こりそうな予感がして足取りも重く自転車に跨った。
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