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「大体、何でそんなに俺の顔見たがるんだよ」
「だって、好きだから」
「はぁ?」
「好きだから、吾郎君の顔……ずっと見ていたいんだ」
髪にそっと触れて、耳元で甘く囁かれ吾郎はかぁっと頬を染めた。
「バカ……恥ずかしいこと言ってんじゃ、ねぇよ」
「フフ……照れてるところも、可愛いよ。吾郎君」
「男に可愛いって、使うセリフじゃねぇだろ」
寿也に背中を向けたまま、耳まで染めて俯く彼を、寿也はそっと抱きしめたた。
「吾郎君は可愛いよ。仕草とか、表情の一つ一つとか」
抱きしめられた背中越しに伝わる、ドクンドクンと心臓が混ざり合う感覚に吾郎は少しくすぐったい気持ちになった。
他の奴等に可愛いなどといわれた日には多分鳥肌が立つのだと思うが、なぜか、寿也に言われると嬉しいような感覚になる。
そっと寿也の腕に自分の腕を絡ませると、段々と顔が近づいてくる感覚があって、吾郎はそっと瞳を閉じた。
だが、唇が触れ合うことはなく、吾郎はうっすらと瞳をあけた。
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