「おー。あいつらもうチューしてんぞ。」
薬師寺達より一つ前のゴンドラに乗った吾郎は、窓の外を眺めながら丸見えの二人の観察に勤しんでいた。
「悪いよ、吾郎君。そんなの見ちゃダメだって」
「ってゆうか・・・・別に見たくて見たわけじゃねぇし。」
ぽりぽりと頬をかきながら、視線を寿也のほうへ移す。
「あいつら、普段はあんま一緒にいねぇけど、二人っきりになると意外といちゃついてんだな」
「そりゃそうだろ?恋人なんだし」
「そうだけどよなんか、薬師寺のギャップがすっげぇ激しいってゆうか」
「もう。人の事気にするのは止めなよ。今は、僕の事だけ見て。僕のことだけ考えてよ」
まっすぐに見つめられて、吾郎は頬を染めた。
てっぺんまでもうすぐ。
ゴンドラが上に上がるにつれて、鼓動も速くなり二人の距離も近くなる。
頂上に着いたと同時に、唇がふれあい、指と指を絡ませる。
ゴトン、ゴトンと次第に下がってゆくゴンドラに合わせ二人も距離を取る。
「きょうは楽しかったね」
「ああ。みんなで行くのも意外と面白かったぜ」
はにかみながら、そう言って、ゴンドラに乗っている間だけ手を繋ぐ。
「好きだよ。吾郎君」
「なんだよ、変なヤツだな。んなことわかってるよ」
照れくさそうに、後ろ髪をかき視線をそらす。
ふとみればすぐそこに降り口が見えて、手を離しドアが開くのを待った。
観覧車を降りて、眉村たちと合流し、薬師寺と目が合った。
「よぅ、ラブラブなお二人さん。チューするならもっと見えないようにしろよな」
「!!!!」
「おっ、薬師寺が赤くなったぞ!ほらっ、見ろよ寿」
「茂野、てめぇでかい声でんな事言うんじゃねぇよ!!」
「だって、俺バッチリ見ちゃった……グェエっ」
「よほどあの世に行きたいらしいな・・・茂野!」
首を腕で思いっきり締め上げると、堪らず吾郎からギブアップのサインが出る。
「はぁっ薬師寺、てめぇ、今マジで首絞めやがったな!」
「茂野がうぜぇ事、言い出すからだろ!?」
「俺は見たまんまのことを言ったんじゃねぇか」
「だから、それが余計なことって言ってんだよ!」
ぎゃぁぎゃぁと口げんかを始めた二人に、寿也と眉村ははぁっと重く息を吐いた。
「折角、楽しいムードだったのにねぇ」
「同感だな。とりあえず、これ止めて、戻るか」
「そうだね」
互いのパートナーを掴まえて、落ち着かせると四人は遊園地を後にした。
ちなみに、薬師寺君は寮に着くなりマジで押し倒されたそうな。
そして、ぬいぐるみは今も眉村の枕元に飾ってあるらしい
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