「なぁ、休憩しようぜ?」
「お前それさっきも言ってたじゃねぇか」
吾郎の言葉に、呆れたように薬師寺がチラリと視線を移す。
「だぁってよ。全然わかんねぇもん」
「フフ吾郎君、数学苦手だもんね」
「コイツの場合全教科苦手だろ?」
「そうとも言うね」
くすくす笑う寿也にムッとした表情で吾郎は顔を上げる。
「お前ら、失礼だろ! 俺にだって、得意な科目くらいあるっつーの!」
「へぇ、なんだよ?」
「あ! 僕があててあげようか」
「へっ! あてれるもんなら、当ててみろ!」
自信たっぷりな吾郎に寿也は自分の指を彼の鼻にピッとくっつけた。
「保健」
「はぁ? んなのテストにねぇだろ? 大体、何で保健なんだよ」
「なんでって、コッチの授業は覚えるの早いからね」
頬をなぞる様に撫で上げると、とたんにビクッと身体を強張らせる。
「オイオイ、イチャつくの構わないが、俺の頭の上でするのは止めてくれ」
「あ、ごめん。薬師寺」
頭を下げて深いため息をついた薬師寺は、自分の教科書を閉じるとチラリと寿也を見た。
「おい、場所変われ。こうも目の前でイチャつかれたら落ち着かねぇ」
「お、オイっ薬師寺行くなよ。寿也が隣になったら俺困るって」
「フフ吾郎君、それ、どういう意味?」
縋るように薬師寺の腕を掴んだが、寿也の黒い笑顔で見つめられ何も言えなくなってしまった。
結局、薬師寺と寿也が場所を入れ替えて再び勉強会が始まった。
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