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本当は、今すぐにでも会いたい。
会って……うぅん、せめて声だけでも聞きたい。
でもそれは、叶わぬ願いだから。
「ま、今はきっと爆睡して夢の中だろうけどね」
「ん? 何の話だよ。……って、お前その時計、狂ってるぞ?」
僕の腕時計が指す時間はもう直ぐ午前七時。
今の正しい時間は夜の九時だ。
「いいんです。この時計はこのままで」
「……?」
この時計は吾郎君の生活してる時間を示すもの。
少しでも君の事を考えて居たいから……。
「わかんねぇヤツだな、佐藤って……」
「ハハっ、まぁいいじゃないですか」
苦笑しながら、僕はもう一度月を見上げた。
*PREV END#
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