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ヒュ〜〜〜〜〜〜、ドーーーーン。
大きな爆音が響いたかと思うと空が真っ赤に染まる。
当然、俺たちもその巨大な花火に釘付けになった。
辺りに行きかっていた人の波も、今は止まりそこにいるほぼ全員が一斉に夜空に浮かぶ大輪の花に目を奪われる。
「なぁ、もっと近くに行ってみようぜ!」
空になったたこ焼のケースを備え付けのゴミ箱に放り込むと、徐に俺の腕を掴む。
そのまま、人ごみを掻き分け突き進むと広場に出た。
そこには大勢の人が居て、とてもゆっくりと花火見物というわけにもいかなかったが、それでも不思議な事にあまり苦にはならなかった。
「な? 祭りって楽しいだろ?」
色とりどりの花火を見上げ、ポツリと呟く。
「――そう、だな」
人ごみなんて、やはりあまり好きではないし、興味をそそられる屋台も無い。
祭りのような、人が集まる場所は、俺には合わないな。
そう、思いながらも何処か楽しいと感じているのは、やはりコイツのおかげなのかもしれない。
「たまには……また、一緒に来てやってもいいぞ」
夏のぬるい風や、硝煙の焼ける匂いを感じながら、そっと手を握り返した。
*PREV END#
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