不意に腕を掴まれ、引っ張られる。
人の波に乗ると、周りのペースに合わせて歩き出した。
「おっ! なぁ金魚掬いやろーぜ!」
茂野が指差す先には、1回300円と言う看板。
水槽の周りには小さな子供がたむろしていた。
茂野は臆することなくその子供の群れに混じってポイを水に浸す。
慎重に黒の出目金を掬おうとしたその瞬間、ピチピチと跳ねた重みでポイが破れ、再び金魚は水槽の中へ。
「――あーっ! 失敗しちまった」
「…………」
小さく舌打ちをして、店番のおやじからおまけの金魚を貰う姿は、その辺にいるガキと大差ない。
まぁ、中身がガキだから、同レベルなのかもしれないが。
「まぁ、いいや。次、行こうぜ」
再び歩き出した茂野が次に立ち止まったのは、輪投げだった。
景品の中にはWiiや、PS3など結構いいものが含まれている。
どうやら茂野の狙いはWiiらしい。
思い切って投げた輪は僅かに右に反れ、隣りに置いてあった、りかちゃん人形に入った。
「チッ、あんだよ……、人形なんていらねぇつーの」
ぶつくさ文句を言って人形を受け取るその姿に、俺は思わず吹き出しそうになってしまう。
「あ! てめっ、眉村! 笑いやがったな!」
「ふふ……このくらいの事で一喜一憂してるお前の姿が可笑しくてな」
堪えきれず吹き出すと、ムカついたのか茂野は口をへの字に曲げた。
「つーか! そう言うならおめぇがやってみろよ! 結構難しいんだぞ!!」
「……断る。 俺はそんな子ども染みたことはしない」
「とか何とか言って、失敗すんのがこわいんだろ?」
人を子馬鹿にした口調に些か腹も立ったが、敢えてスルーする事にした。
「あんだよ、無視すんなって!……って、おいっ!」
「まだ何かあるのか?」
「だから、無視するなって……たくっ、もういい。早いとこ次行こうぜ」
まだ何かするつもりなのか。
何処からその元気が沸いてくるんだ?
俺の疑問を他所に茂野はずんずん進んでいく。
「――なぁ食うか、あれ?」
「え?」
指差す先には香ばしい匂いを漂わせた、たこ焼き屋。
旨いかどうかはわからないが、何人かが列を作っていた。
|