雲ひとつ無い空には満天の星が輝き手を伸ばせば届きそうなほどで、眼下には、キラキラと光る夜景がみえる。
「すげぇ……」
それ以上の言葉が思いつかず、ごくりと息を飲み込んだ。
ふいに、後ろから抱きしめられて、吾郎の鼓動は跳ね上がる。
「キ、キーン!」
「好きだ、茂野」
気がつけば目前まで彼の顔が迫っていて、吾郎は戸惑ってしまった。
「だ、ダメだって。ココには他に人がいるし」
「大丈夫だ。日本ほど同性愛に否定的ではないから、別に男同士でこういうことしても誰も気にとめん」
そういいながら、強引に唇を奪う。
「んっ」
(うっわ……キーン、めちゃめちゃキス巧すぎ)
啄ばむようなキスに、吾郎はすっかりメロメロになってしまい、そっと背中に腕を絡ませた。
急にカクンと膝が折れ、慌ててキーンが腕を掴む。
「ハハッ悪りぃ、ムード壊しちまって」
恥ずかしそうに俯く彼を引き寄せ、車のフロントに乗せるともう一度口付ける。
「さっきの答えだが……」
「へ?」
突然言われ、吾郎は目を白黒させて、彼の言う”さっき”がなんなのか、考えを巡らせた。
「俺が愛しているのは、お前だけだ。俺の車のサイドシートは茂野しか乗せない」
「あぁ、そういう事か……、嬉しいぜ。キーン」
吾郎は、腕を伸ばしてキーンに自ら抱きついて、耳元で囁いた。
「俺も……愛してる」
二人は、長い間口付けあって、それから車に乗り込み夜の闇へと消えていった。
2009.4.4 再録
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