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「今日は悪かったな。昼飯までおごってもらっちまって」
「別に。俺がそうしたかっただけだ。気にするな」
海岸沿いに沈む夕陽をバックに車を走らせる。
車内には軽快な音楽が流れていて、吾郎は始終ご機嫌だった。
「悪いがもう少し、付き合ってくれ。茂野」
連れて行きたいところがある。
今まで軽快な音楽を流していたのを、バラード系の曲調に変えてゆったりと車を走らせる。
「なんか、よかったのか? 最初に乗せたのが俺で」
「何のことだ?」
「いや……さ。ほら、最初に乗せんのはやっぱ彼女とかがよかったんじゃねーかなって」
ちょうど、駐車場が見えてそこに車を止めて吾郎を見つめる。
辺りはすっかり暗くなって、街灯の淡い光だけが二人を包み込んでいた。
「着いたぞ、出ろ」
吾郎の質問には答えず、キーンはドアを開けた。
吾郎が外に出ると、そこには息を呑むほどの美しい光景が目前に広がっていた。
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