2154/154
それは、今回の旅行が決まって数日経ったある日の事。
吾郎は、いつものように彼の部屋に居た。
「なぁ、いつまで待たせるんだよ!」
備え付けのベッドに座り、次の試合のデータチェックを行っている彼が終るのを待って
いた吾郎は、抗議の声を上げた。
「もう少しだ。静かにしていろ」
一瞬だけ、視線があうと直ぐにまたデータと向き合う。
吾郎からしてみれば、恋人がわざわざこうして足を運んでいるのだから、作業は後回しにして欲しいと思ってしまうのだ。
自分より、次の試合の事ばかり優先する彼に吾郎の不満は募るばかり。
そんな吾郎の気持ちを知る由も無い彼は、黙々と作業を続ける。
「なぁ、まだおわんねぇの?」
退屈で仕方が無い吾郎は、ベッドに寝そべりあっちへゴロゴロこっちへゴロゴロ。
だが、彼の答えはやはり、「あと少しだ」だった。
*PREV NEXT#
Bookmark
Menuへ戻る