「――これは、どういう事だ?」
空港に着き、先ずキーンが発した言葉がコレだった。
コイツは誰だ。とばかりに寿也を上から下まで凝視する彼に、寿也も無言で応戦する。
早くも怪しい雲行きの二人を、吾郎はヒヤヒヤしながら見つめていた。
「えっとだな……コイツは俺の幼馴染の寿也だ」
「ほぉ、幼馴染か。 俺はキーンだ。吾郎とはホーネッツでバッテリーを組んでいる」
「うわっ!?」
グッと肩を引き寄せられ、キーンに抱きとめられる形になる。
「へ、へぇ。チームメイトって誰かと思ったら……ネット配信の試合でよく拝見してましたよ。ゴールデンルーキーのキーンさん」
ピキッと凍りついた空気が、周囲を包み込む。
「と、寿」
「取り合えず、予約してるホテルに荷物を置きに行ったらどうです? そのままじゃ観光も出来ないでしょう?」
「ホテル? そんなものは取っていない」
「は? 取ってねぇって、なんだそりゃ!?」
二人の間に立って、通訳をしていた吾郎が素っ頓狂な声を上げる。
「飛行機代も馬鹿にならんからな。こっちに滞在している間はお前の家に泊めてもらう事にした」
シレッと当たり前のように言う彼に、吾郎は軽い眩暈を覚えた。
「ちょっ、おまっ……そりゃ無理だって、うちには家族も居るんだぞ!?」
「あぁ、大丈夫だ。迷惑はかけん」
(全然大丈夫じゃねぇんだよっ!)
「――吾郎君、彼はなんて言ったんだい? ホテルの名前は?」
「えっ? えっと……それが」
クイッと腕を引かれ、寿也と視線が絡む。
「あ〜う〜」
「なんだ、どうかしたのか? 早くお前の家に連れて行ってくれ」
反対側からキーンに腕を引っぱられ、吾郎は泣きたい気分になった。
(たく、なんでこうなっちまうんだよ。 誰か助けてくれ〜〜っ!!!)
幸せな休日から一転、とんでもない修羅場に発展した現状を、夢であって欲しいと願う吾郎だった。
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