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口腔内に濃厚なバターの香りが広がる。キーンの太くて指先が口の中を撫でて舌先を擽られるようにされると否が応にも意識がそこに集中してしまう。

バター犬って、バター犬って……アレだろう?

全身にバター塗りつけて犬に舐めさせるってヤツ。

ただでさえ舐められたらくすぐったいのにそれが全身なんて,そんなことされたら俺、どうなちまうんだろう?

「……ふ、ぅ……んっ」

唾液で濡れた指先が唇をぬるりと撫でてぞくりと甘い痺れにも似た感覚が首の後ろを駆けていった。

「いやらしい眺めだな。一体何を想像している?」

耳元で息を吹きかけながら囁かれ、体温が一気に上がった。

慌てて顔を逸らした視線の先では瞳を輝かせたワンコが尻尾を振りながらこちらを見つめていて、思わずぎょっとなる。

「ゴローに舐められて快がりまくる自分の姿でも想像したか?」

「ちがっ! そんなこと……」

「本当か?」

「……っ」

何も言い返せなくなった俺を見て、キーンがクッと小さく肩で笑った。

「冗談だ。こんな子犬に如何わしいことを教えるわけないだろ」

「え?」

「なんだ、残念そうな声を出して。そんなにゴローに舐められたかったのか?」

「ちがうっつーの!」

速攻で否定した俺を鼻で笑い、キーンがゆっくりと体重をかけていた身体を起こした。

「俺はゴローにそんなことを教えるつもりはなかったんだが……、お前が期待しているなら応えないわけにはいかんな」

言いながら子犬の頭を撫で、俺の唾液がたっぷりとついた指を犬の口元へと持っていく。

子犬は尻尾を盛大に振りながらぺろぺろと熱心に指先を舐め、そのたびに赤い舌が小刻みに揺れた。

ちょっと、気持ちよさそうかも……。あんなんに舐められたらマジでヤバそうだ。

「――で、どうするんだ?」

「ど、どうって……」

指先を舐めるワンコを凝視していた俺は、キーンの声で我に返り思わずどもってしまった。


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