キンゴロ2154/154


5、4,3,2,1

『HAPPY NEW YEAR!!』

盛大な歓声とクラッカーが弾けとび新しい年が始まりを告げた。

その瞬間。

「おめでとうシゲノ!」

「どわぁっ!?」

突然近くに居たロイに抱きつかれ、吾郎はギョッとした。

何事かと思っていると、今度はワッツに抱きしめられ、さらにオデコにキスまで。

「おい、お返しは?」

「は、はぁ?」

チョイチョイと自分の頬を指差し、キスしろと合図してくるワッツ。

「ココにいるなら、アメリカ式の祝い方を覚えないとな」

ニッと笑われ、少し躊躇いつつ頬に軽くキスをした。

その後もハグとキスの嵐で、一通り終わった頃には吾郎はぐったりとしていた。

ふと、視線を上げるとキーンが見ず知らずの女性の頬にキスをしている姿を目撃。

胸にチクリと何かが刺さるような違和感を感じた。

(なんだよ、キーンのヤツ。俺にはあんな顔見せないくせに)

珍しく笑顔を浮かべて女性とハグやキスをしている姿を見ると、心にモヤモヤした気持ちが広がってゆく。

社交辞令だとはわかっていたが、やはり面白くない。

「どうした? 新しい年の始まりだと言うのに酷い顔だな」

「べっつに。なんでもねぇよ」

自分の浅ましい感情を知られたくなくて、脇をする抜けると食事を取りに向かう。

「シゲノ」

「!」

ギュッと後ろから抱きしめられてドキリと心臓が跳ね上がった。

耳のすぐ側に生暖かい息を感じなんとなくくすぐったい気持になる。

「そう怒るな。ただの挨拶だ」

「……わかってるよ。んなこと」

わかってるからこそやり場のない感情を持て余しているのだ。

「……」

キーンは緩く息を吐くと、吾郎の顎を持ち上げ強引に自分の方へと引き寄せた。

「――え?」

チュッと言う小さな音を立てて唇に柔らかい感触が当たる。

「happy new year goro」

暖かな眼差しと視線がぶつかり、胸が熱くなった。

「キスは頬にするもんじゃねぇのかよ」

身を委ねてしまいそうになる気持ちを抑え、抗議する。

周囲には仲間や一般人が沢山いるのだ。

二人の関係を知っているのはごく一部にすぎない。

戸惑いを隠しきれない吾郎を見て、キーンはフッと笑みを零した。

「構わんさ。酔った上での奇行だという事にしてしまえば問題ない」

「酔ったって……お前思いっきりシラフじゃ……っんんっ」

すべてを言い終わる前にもう一度唇を塞がれた。

ほんの少し開いた隙間から舌を割り入れられ、口腔内を蹂躙する。

「ん……ぁっ……待てよキーン……っ」

隅々まで丁寧になぞる様に舌を絡め、歯の裏まで舐められて甘い痺れにも似た感覚がジワリと沸き起こる。

濃厚な口付けに腰の力が入らなくなり、堪らずキーンの腕を掴み熱い息を吐いた。

「ずりい……こんなキス……」

「キスして欲しそうな顔してたからな」

「してねぇっ!」

身体を預けながら、カッと頬を染めムキになる吾郎を見て、キーンはクックックと肩を震わせた。

「キスしてる時のお前、気持よさそうな顔してたぞ」

「うるせぇっつーの!」

文句を言ってみても腰の力が抜けて彼にしがみついているままでは説得力のかけらもない。

「おいおい、いちゃつくなら余所でやってくれないか」

「!」

呆れ顔のワッツにそう言われ、キーンは肩を竦めた。

「だ、そうだ。続きは部屋でするか」

「……っ!」

肩を抱きながら露骨に言われ、羞恥で顔が益々火照りだす。

「おーぉ、新年早々熱いねぇ」

「うっせーよ、ロイ!」

ニヤニヤと笑いながら見送られ、二人はワッツの家を後にした。


*PREV END#

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