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「――何をソワソワしてるんだい?」
「!?」
突然静かだった部屋に聴きなれた声が響く。
い、今。寿也の声がしたような……。
慌てて辺りを見回したが俺以外に人の姿は見当たらない。
キーンは未だシャワー中らしく、水音が絶え間なく響いてくる。
俺、疲れてんのかな?
ここんとこ連戦続きだったし。
寿也の幻聴が聞こえるなんて、絶対どうかしてる。
額に滲んだ汗を手の甲で拭い、もう一度辺りを見回した。
「何処見てるんだい? 僕は此処だよ」
「!?!?」
今度は確かにはっきりと、すぐ近くで声がした。
だけど人の気配は何処にもない。
「吾郎君、此処だよ、下!」
「下?」
恐る恐る声のする方向に視線を向ける。
すると、あろう事か俺のズボンの前面に寿也の顔が!
って、まさか……っ!?
「――っと、寿なにやってんだよ、そんなところで!」
「なにって、君が僕の見てないところでおかしな行動してないか監視だよ」
「監視って! つか、本当に寿也なのか?」
「ひどいなぁ。僕の声、忘れたのかい?」
「おいおい、冗談だろ?」
一体どうなってるんだ? 何がなんだかわからねぇ。
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