ゴンッゴンッ、と言う鈍い音と共に窓が小さく揺れる。
「!?」
「よぉ、寿! 今からそっち行ってもいいか?」
「え……っ、吾郎君!?」
外に立っていたのは小さな雪の玉を握り締めた吾郎君。
僕は幻を見ているのだろうか?
あまりの事に驚いて声も出せずにいると、吾郎君はわざとらしく身体を震わせた。
「外はすっげー寒いんだよ。入れてくれねぇと俺凍えちまう」
僕は狐につままれたような不思議な感覚のまま、部屋に吾郎君を招き入れた。
吾郎君を目の前にしても、僕はまだ信じられない気持でいっぱいだった。
「どうして……。今日は清水さんと一緒じゃなかったのかい?」
「あー、それがさ……どうも落ち着かなくてよ、早めに切り上げてきちまった」
「え?」
遠慮なしに僕のベッドに腰掛けうーんと大きく伸びをする。
「やっぱ寿といる時が一番落ち着くんだよな」
「!」
どうして、この人は僕の欲しい言葉をこうも簡単に言ってくれるんだろう。
きっと彼にとっては深い意味はないんだろうけど。
あまりの嬉しさに僕は思わず吾郎君に抱きついていた。
「吾郎君っ!」
「どわぁっっ!? な、なんだ? どうしたんだよっ」
ドサッ、と言う音と共にベッドに沈む身体。
もう二度とこうやって触れることの出来ないと思っていた頬がすぐ目の前にある。
「寿……?」
「好きだよ。吾郎君……」
そっと囁くと、吾郎君はハッと目を見開いた。
そして、ほんの少し視線を逸らし照れくさそうに鼻の下を擦る。
「バーカ。んな事は前から知ってるっつーの」
はにかんで笑うその表情に、胸がチクリと痛む。
吾郎君の言っている”好き”と僕の”好き”は意味が違うのかもしれない。
でも今は、そんな事はどうでもいい。
クリスマスと言う特別な日に、彼女と過ごすより僕を選んでくれた。
その事実がたまらなく嬉しい。
僕のこと、本当はどう思っているかわからない。
だけど、今日だけは僕だけの吾郎君で居てほしい。
「メリークリスマス……吾郎君」
もう二度と離したくない。
今日と言う日が永遠に続けばいいのに……。
そんな事を思いながら、柔らかな唇にキスを落とした。
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