別に寮に戻れば毎日嫌でも顔を合わせるじゃねぇか。
部活でも一緒。
なのになんでアイツは同じクラスに拘るんだ?
教室に入ると前の席は寿也だった。
だけど、俺が席についても振り向こうともしない。
さっき俺が興味ねぇって言ったのを根に持ってるんだろうか?
わけわかんねぇ。
話し掛けようとしたら、クラスの女子達が寿也を囲んじまってすっかりタイミングを失っちまった。
何話してるかしらねぇけど、楽しそうにしている寿也の後姿見てると、なんとなくムカつく。
「なーに仏頂面してんだ?」
「!?」
突然後ろから背中を叩かれ振り向くと児玉が教科書片手にニヤニヤとしながら立っていた。
「別に。たいした事じゃねぇよ」
「大した事ねぇって割に怖い顔してるぜ。 気になるんだろ? 佐藤のこと」
「なっ、ばっ、そんなんじゃ……」
からかわれたような気がして咄嗟に大きな声が出て慌てて手で口を押える。
「今更隠すなって。 佐藤の奴モテるからなー」
羨ましいんだろ?
そう言いながら肘で突いて来る。
どうやら俺と寿也の関係を言っているわけでは無さそうで少しホッとした。
「つーか、そんなにモテるのか? 寿也のヤツ」
「あれ? 茂野知らねぇの?」
俺の問いに身を乗り出して来たのはこういうゴシップが明らかに好きそうな渡嘉敷。
「佐藤ってさー、あのルックスにあの成績だろ? 野球部時期キャプテンって言う肩書 まで付いちゃって女子に大人気らしいよ。噂じゃ早くも他校の生徒にまで目を付けられてるって話だし……」
「へ、へぇ〜」
全然知らなかった。
俺が知ってる寿也は、いつも俺の尻ばっか追いかけててスケベでちょっと軽い変態入ってて、とんでもなく腹の黒い男なのに……。
「かーっ、羨ましいぜ。 俺も一度でいいからあそこまでモテてみてぇよ」
「児玉には一生かかっても無理だろ」
「なんだと!?」
ドッと沸き起こる笑い声を何所か遠くで聞きながら、目の前に座っている男の背中に目をやる。
手を伸ばせば届きそうな位置にいるのに、今はなんだかとても遠くに居るような気がして何となく気分が重くなった。
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