天の助けとばかりにドアを開けると、ソコに立っていたのは眉村だった。
「茂野。ちょっといいか?」
「え? あぁ。なんだよ」
中で落ち込んでいる寿也を気にしつつ、廊下に出るとスーッと冷たい空気がまとわり付いてくる。
思わず身震いをした俺を見て、眉村の表情が一瞬だけ緩んだ。
「あんだよ、笑うなよ」
「フッ、すまん」
なんとなくガキ扱いされてるようで悔しいが、それでも滅多に見れない眉村の笑顔が見れたという事に対してなんだか少し得したような気分になる。
「で? 何か用があるんだろ」
「ぁあ。今度の木曜……何処か行きたいところはあるか?」
ポケットに手を突っ込んだまま、照れくさそうに話す。
「行きたいトコ? なんだ、なんかデートに誘われてるみたいだな」
「……っ」
グッと言葉に詰まり、ほんのりと頬が薄紅色に染まる。
「え? マジ!?」
その日開けといてくれとは言われてたが、まさかそれがデートの誘いだったとは夢にも思わず目が点になる。
俺、ただいつものように部屋に行くもんだと思ってたぜ。
「嫌ならいいんだ。 可笑しな事を聞いてすまなかったな」
俺の態度を否定的に捉え、眉村は緩く息を吐くとその場から立ち去ろうとする。
「待てよ! 別に嫌だなんて言ってねぇだろ?」
「!」
グッと腕を掴むと眉村が驚いたように顔を上げた。
「いいぜ。どのみち前から約束してたし。バッティングセンターにでも行くか♪」
「バッティングセンターなら、いつでも行けるだろう」
「んだよ、行きたいトコあるかって聞くから答えてやったのに」
文句を言うと、フッと笑みを零して俺の頭をクシャッと撫でた。
「だから、ガキ扱いすんなっていつも言ってるだろ? 俺は行きたいトコなんてそんなにねぇから、お前に任せるわ」
「そうか。じゃぁ木曜日にな」
「おう!」
軽く手を振って部屋へと戻ってゆく眉村の後姿を見送りながら自然と緩む頬を押さえる。
水曜はアイツとデートか。
なんだか不思議な気分だぜ。
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