「じゃぁな。今日は楽しかったぜ」
エレベータが一階に辿り着き、フロントで事情を話していると聞きなれた声が耳に届く。
「おい佐藤。あれ、茂野じゃないのか?」
「え?……ホントだ。 吾郎く……!?」
声を掛けようとして、手を上げたまでは良かった。
だけど、僕は(恐らく眉村も)その場で固まってしまった。
僕らの目の前で、吾郎君が金髪の男と軽くハグしているのを目撃してしまったから。
信じられない……。
僕らがこんなに心配してたって言うのに。
練習サボって、アメリカ人(しかも男)とデートしてたなんて。
プルプルと腕が奮え怒りが込み上げてくる。
「随分楽しそうだねぇ」
「どわわわぁっ!? と、寿っ、なんだよ驚かすなよ」
声を掛けると異常なほど肩をビクつかせ、仰け反る。
「あれは一体誰なんだい?」
「あれか? あれはギブソンの息子。ギブソンJrだ。 なんか飯おごってくれるって言うからよ〜って、どうかしたのか?」
僕の異変にようやく気が付いたのか、不思議そうに顔を覗き込んでくる。
「ほぉ、お前は代表の練習より、飯に釣られたわけか」
「ん? おぉ、眉村。 お前もどうしたんだよ。 二人とも顔こえぇぞ」
僕と眉村を見比べ事態を把握しようとしている吾郎君の姿に更にイライラが込み上げてくる。
あのジュニアって男……吾郎君と何処までの関係なんだ。
「とにかく、話は部屋でゆっくりと聞かせて貰おうか。 ね、眉村」
「そうだな。 幸い午後はフリーだ」
時間はたっぷりあるからね。
「お、おぃっ!? なんだよ、一体……俺が何をしたって言うんだっ」
焦る吾郎君の両脇を固め、再びエレベーターに乗り込む。
「僕らを心配させる君が悪いんだよ」
「そうだ。諦めろ」
事と次第によっては……お仕置きも考えないとね。
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