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「……眉村」

吾郎君が居るフロア。シンとした扉の前に立っていたのは近くにあるパン屋の紙袋を手にした眉村の姿だった。

「なんだ、佐藤か」

「なんだ、じゃないよ。悪かったね僕で」

なんだかんだ言いながら結局眉村だって心配なんじゃないか。

目が合うと、ふっと目を伏せて肩を竦めた。

でも、その様子じゃ僕のお目当ての吾郎君は部屋に居ないらしい。

「寝てる……わけじゃ無さそうだな。 部屋に人の気配がない」

「やっぱりそうか。携帯にも繋がらないし……一体どうしたんだろう」

僕の脳裏にさっきの想像が蘇る。

「まさかホントに刺されたりしてるんじゃ」

「!? おい、それは考えすぎだろう!」

「じゃぁ、何処にいったって言うのさ。 練習にも食事にも出ないなんて……確かに夕べはこの部屋にいたんだよ?」

「それは……」

僕の言葉に眉村の表情からも余裕が消えてゆく。

「とにかく、フロントに行ってキーを借りてくるか」

「そうだね、とりあえず中に居るか居ないかだけでも確認しなくちゃ」

僕たちは顔を見合わせ、フロントに向かうべくエレベーターへと乗り込んだ。

ところが。


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