「別に甘やかしてなんか……僕はただ、吾郎君が部屋で寝込んだりしてないか心配で」
眉村は「それが甘やかしてるって言うんだ」と呟いて、緩く息を吐いた。
「あいつはそう簡単に倒れるタマじゃないだろう」
「それは……そうだけど……」
確かに、吾郎君なら多少熱があっても怪我をしてても練習に出て来るはずだ。
その吾郎君が練習に出て来ないから心配なんじゃないかっ!
「とにかく、ただの寝坊だろ? そのうち来る。お前も、茂野の心配する前に練習に集中しろ」
ストレッチを終え、僕の肩をポンっと叩いて眉村はブルペンへと行ってしまった。
なんだよ……眉村ならこの気持ちわかってくれると思ったのに。
もう吾郎君の事は諦めたのかな。
まぁ、それならそれで僕にとっては好都合だけど。
ライバルは少ないにこしたことはないからね。
結局、午前中の練習にも昼食にも吾郎君は現れなかった。
携帯も繋がらないし。
不安は募る一方で、やっぱり気になってしまう。
もしかしたら過激なファンに刺されたりとか。
口も態度も悪い吾郎くんなら、話が縺れて殴りあいにとか……
ココは日本とは違う。 吾郎君なんか特に素行が荒いから考えられない話じゃない。
時間が経てば経つほどソワソワして落ち着かず、僕はもう一度彼の部屋へと足を運んだ。
すると――。
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