「だけど、アメリカ行きは止められねぇよ」
「!?」
「眉村の気持ちはすげぇ嬉しいけど。俺、アメリカに行ってどうしてもやらなきゃいけねぇ事があるんだ」
みるみるうちに表情が強張っていくのを感じ、物凄い罪悪感に襲われる。
でも、もう決めた事だから。仕方ない事なんだ。
「悪いな」
「いや……いいんだ。俺の方こそ変な事言って悪かった」
すっかり意気消沈してがっくりと肩を落とす。
そんな情けないコイツの姿は見たくなくて、わざと明るく振舞って見せた。
「んな顔すんなよ。 いいじゃねぇか両想いだってわかったんだし。それに、今すぐアメリカに行くわけじゃねぇんだしさ」
そっと手を握るとハッとした表情を向ける。
「別にもう二度と会えないわけじゃねぇ、だろ? ちょっと遠距離恋愛にしちゃ遠すぎるかも知れねぇが、シーズン終ったら帰って来るし……。暫くは一緒に居れるじゃねぇか」
「茂野……そう、だな」
「取り合えずさ、明日も会おうぜ。 明日だけじゃなくて、互いの都合が合う日は出来るだけ。 先ずはソコから、だろ?」
チラリと視線を向ければ、やっと安心したのか表情が少し和らいで静かに頷いた。
「つーかもう、夜も遅いしお前ん家泊めてくれよ」
「何!?」
「だって帰るの面倒くせぇし……いいだろ」
眉村は暫く考えたあと、小さく息を吐いて肩を竦めた。
「なんだよダメなのか?」
「いや、俺は構わんがどうなっても知らんぞ」
ポリポリと頬を掻いて照れくさそうに手を差し出す。
「……どうなってもってお前……やらしーな、何考えてんだよ」
「別に……大した事じゃない」
「ふぅん、ま、なんでもいいや。 早く行こうぜ」
握り返した手を確認し、ゆっくりと歩き出す。
限られた時間は少ししかない。
やっと手に入れた幸せな時間は有効に使わないとな♪ |