唇を離すと、俺たちの間を銀色の糸が伝っていた。
プッツリと切れてしまったソレを名残惜しそうに見つめ、ペロリと唇を舐める。
目が合って、さらに引き寄せられた。
「ちょっ、苦しいって。離せよ」
抱き締めているその腕が、ほんの微かに震えているような気がするのは俺の気のせいだろうか?
「行くな、茂野……」
きつく抱き締められていて表情こそ見えないが、切なさを押し殺したようなその声に胸が締め付けられる。
「……好きだ」
「――え?」
僅かに聞き取れるか聞き取れないかと言うほどの小さな声。
でも確かに「好きだ」と聞こえた。
「眉村?」
「ずっと前から、茂野の事が好きだったんだ」
真剣な表情で見つめられ、胸が高鳴る。
眉村が冗談でこう言う事を言うやつじゃないとわかっている。
俺は都合のいい夢を見ているんじゃないか?
そんな思いが頭を過ぎり思い切り自分の頬を抓ってみた。
「ぃて……っ、夢じゃ、ねぇ」
「当然だ。 夢の方がよかったか?」
不安そうに尋ねられ、俺はゆっくりと首を横に振った。
「ばーか。んなわけねぇだろ? 俺だって、お前の事好きだったんだぜ?」
ずっと前、多分海堂寮で再開したあの日から――。
「そうか、じゃぁ……」
俺の言葉に、ホッと安堵の表情を見せる。
でもそれはほんの一瞬だった。
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