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店を出る頃にはもう、夜も更けていて車も人の姿もまばら。

「もう少し、歩こうぜ」

俺がそう言うと、眉村も黙って頷く。

本当はとっくに門限は過ぎてたんだが、今日と言う日を逃したら多分もう二度とこうやって二人で会うことはできねぇんじゃないかって思ったら、帰りたくなくなっちまった。

「……お前、アメリカに行くんだって?」

「あ? ぁあ、まぁな」

土手に座り、川の流れを見つめながら言葉を濁す。

「オーシャンズの内定出てたんだろう?」

そう聞かれて、言葉に詰まる。

暫く時が止まったような、そんな気さえした。

「相変わらず、馬鹿なやつだ」

「んだよ。 悪かったな、馬鹿で。 まさか、それを言いに来たとか言うんじゃねぇよな」

「そうだ。と言ったらお前、どうする」

真っ直ぐに切れ長の瞳に見つめられ二の句が継げなくなる。

コイツならマジで言いかねない所が、また恐ろしい。

「冗談だ。だが、残念だな。いいチームメイトになれると思ってたんだが」

「……」

俺は返す言葉が無くて、ただ俯く事しか出来なかった。

川辺には丸い満月が映し出され、キラキラと美しく輝いている。

時折跳ねる魚の水音を聞きながら、気まずい沈黙が続く。

「し、仕方ねぇだろ? もう、決めちまった事なんだ」

「そう、だな」

フッと一瞬寂しそうな表情した眉村に胸がちくりと痛んだ。

「つか、どうしたんだよ。今日のお前、らしくねぇぞ?」


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