「もー、キスするの? しないの? どっちだよ」 思わず恥ずかしくなって顔を背けた俺に、抗議の声が飛んでくる。
ヒュルルルル……花火の火種が天高くどんどん上ってゆく。
「仕方ねぇから、してやるよ!」
「!?」
はるか上空で花開く瞬間、俺は無理やり寿也の顎を引き半ば無理やり口付けた。
バァンと弾けて散ってゆく音を聞きながらゆっくりと唇を離すと、寿也の目は大きく見開かれていて、面食らった顔をしていた。
「プッ、流石の寿也も不意打ちには弱いってか」
「なっ! ずるいよ吾郎君! 折角ムードまで作ってたのにさぁ……」
頬を染め、心底悔しそうな表情をする。
「いいんだよ、んなもん。こんなとこでいちゃつかなくても、寮に帰ればいくらでも出来んだろ」
「え……もしかしてそれって最後までシてもOKって事だね!?」
「アホか! キスだけに決まってんだろ!」
なんつー都合のいい思考回路だと、半ば呆れてしまう。
寿也に合わせてたら、体がいくつあっても足りねぇ。
「ほら、帰ろうぜ。仕切りなおし……すんだろ?」
「! ……うん 」
スッと差し出した左手に、寿也の右手が絡む。
終盤に差し掛かりつつある花火を背に、俺たちはゆっくりと帰路に着いた。 |