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一体どれだけ走ったのか……、いつの間にか辺りは真っ暗になり自転車の小さな明かりだけが薄暗い闇夜を照らしていた。

車の量も減少し歩いているやつもあまり見かけない。

時間を確認すると時計の針は八時半を指していてだんだんと小腹も空いてくる。

コンビニを探そうと思っても、周りは田んぼばかりで見える範囲内にはそれらしき建物は見当たらなかった。

「何処まで行くんだよ。もう大分走った……っ!?」

全て言い終わる前に、今まで順調に走ってきた寿也の自転車に急ブレーキが掛かった。

「うぉっ!? あっぶねぇなどうしたんだよ一体――」

「あれ……」

危うくぶつかりそうになって文句を言おうとしたその矢先、寿也の指差す方向に薄緑色に光る物体が――。

「蛍?」

「多分そうだよ、行ってみよう!」

慌てて自転車を飛び降りて、光が乱舞するその場所へと土手を駆け下りる。

ハラハラと舞い散る雪のように、闇夜に浮かぶ青白い光。

光っては消え、消えては光るを繰り返す。

「すごい、ね……」

「あぁ、すげぇ」

小川のせせらぎを聞きながら、二人並んでその場に腰を下ろす。

 蒸し暑さも、疲れも吹っ飛んじまう。

幻想的なその光景に息をするのを忘れてしまいそうになる。

暫くそれに見惚れていると不意に寿也の手が腰に回る。

自然と寄り添うように引き寄せられ意識がそっちに集中した。

「お、おい離れろよ」

「いいじゃないか。ココには僕たち以外誰も居ないよ」

「そりゃ、そうだけど」

回された腕から寿也の熱を感じ、動悸が激しくなってゆく。


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