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目が完全に据わり不気味なオーラを発しながら近づいてくる寿也に吾郎はたじたじ。
寿也は、黙って吾郎の言葉を待っていた。
「たしか小森、だったかな?」
「こ、小森、君!?」
意外な名前に驚いた寿也だったがさらに続く彼の言葉に絶句する
「いや、違うな……沢村だっけ? それとも、前原」
「ご、吾郎君!?」
うーん、と頭を悩ませている彼に恐る恐る声をかける。
「ちょっと、なんでそんなに相手がいるんだよ!?」
「えっ、ああ。いやぁ、俺さ、どうも寝ぼけるとキスする癖があるらしくって、リトルん時の合宿中に毎晩寝ぼけてやってたらしんだ」
あはは。と明るく笑い飛ばす彼の横で、寿也は引きつり笑いを浮かべた。
「あはは。じゃ、ないよ!! 大事なファーストキスを!」
「んだよ。しょうがねぇじゃん。寝ぼけてたんだから」
「だからって、そんな見境なしに……」
ふるふると、震える寿也の横で、吾郎はポンと手を叩いた。
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