「なにやってんだ? つか、寿!?」
「あ、見つかっちゃった」
ぽかんとしている吾郎のうしろに、大河はササッと隠れた。
寿也はなんて言い訳をしようかと頭を掻く。
「先輩! この人、僕を苛めるんです」
「何!? 本当か!? おい、寿也、どういうつもりだ」
きつい目で自分を見る吾郎に、寿也はゆるく息を吐いた。
「やだなぁ。僕が人を苛めるような悪い人間に見えるのかい?」
「見える!」
「そ、即答だね。結構傷ついたな」
ハハッと乾いた笑いをする寿也に、畳み掛けるように吾郎は尋ねた。
「ってゆーか、なんで寿がここにいんだよ?」
「なんでって、僕の大事な吾郎君が、聖秀へいって、他の部員にヤられてないか心配で心配で」
「こんな、人前でおかしなこと言うんじゃねぇ!!!」
顔を真っ赤にして、吾郎は、寿也を壁に押し付けた。
「あれ、吾郎君随分……大胆だね」
「はぁっ!? 何言ってんだよって、おい!!」
クスッと笑い、寿也の手が吾郎の頬に触れる。
「こらぁっ俺の威厳がなくなっちまうだろうが!! ヤメロって!!」
「んもう。つれないなぁ。あんなに愛し合った仲なのに」
「寿てめぇ、俺の作った野球部を壊しに来たのか!?」
他の部員たちが何だなんだと集まってきた。
「あっ、お前らには関係ねぇ話だから、あっちいけよ!! 覗いたら俺のジャイロ腹に喰らわすぞ!」
シッシと手を振ると、部員たちは遠巻きに様子を伺う。
「とりあえず、なんだかよくわかんねぇけど、俺に会いに来たんだろ? すぐ着替えてくっから待ってろ」
「別に僕は見てるだけだから、気にしなくてもよかったのに」
「見てるだけって……なら、堂々とグラウンドに入ってみればいいだろ?」
吾郎の言葉に、寿也はフルフルと首を振った。
「こっそり覗くのが、いいんだよ」 |