「おい、佐藤はどうしたんだ?」
バッティング練習していると薬師寺が声をかけてきた。
俺が寝込んでるっていうと、少し驚いた顔をする。
「なぁ、俺に何かしてやれることってねぇかなぁ?」
「さぁな。ま、俺が佐藤の立場なら……そっとしといて欲しいと思うぜ」
何かしてやりたい気持ちはわからんでもないが、ほおっておいてやれよ。
それだけ言うと、薬師寺は隣のバッティングマシーンで打撃練習を始めた。
うーん、やっぱそうなのか?
午前中の練習中、俺はずっと俺ができる事はなにか。
そればかりを考えていた。
練習が終わって昼飯の時間になった。
あぁ、腹減った。よく考えたら俺、朝飯食うの忘れてたんだよな。
食堂で飯を食いながら、寿也も腹すかしてるんじゃないかって考える。
風邪のときはやっぱおかゆだよな。
「おばちゃん、おかゆつくってくんねぇか?」
「ええっ……ごめんねぇ。今手が離せないから悪いんだけど一人分くらい自分で作って頂戴」
そう言って、俺に器に持った飯となべと簡易式のカセットコンロを俺に持ってくる。
……ひょっとして……俺にコレで作れって言ってんの?
まぁ、水入れて火にかけるだけだろ? そんくらいなら俺にもできるよなきっと。
そう思って水と一緒に火にかけた。
そこまでは、よかったんだよ。
途中で三宅と話し込んでたら、なぁんか焦げくせぇにおいが!!
ハッ!
気がついたときには既に遅し、おかゆは真っ黒こげでプスプスと音を立てて何気に煙ま で出てやがった。
しかも異常に熱い。
おばちゃんには怒られるし、結局おかゆは出来ねぇしで、踏んだり蹴ったり。
とりあえず、おばちゃんに頼み込んで作ってもらったおかゆを持って運んで部屋に戻る。
「おーい、具合どうだ?」
「ん、朝と全然変わらないみたい」
「飯、食うか?」
「いらない。食べたくないんだ」
「そっか。でも、食わなきゃ元気でねぇぞ?」
俺が食わせてやるから。
そういうと、寿也はゆっくりと起き上がった。
「なんかして欲しい事あれば、遠慮なく言えよ?」
おかゆを口に運びながら、寿也はコクリと頷いた。
「じゃぁ、掃除と洗濯……お願いしてもいいかな?」
三分の一位くらい食べたあと、ポツリと口から出てきたお願いにギョッとした 。
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