「なっ!? 酷いよ、吾郎君!」
聞き覚えのある声がして、振り向くとソコには寿也の姿が。
「僕というものがありながら、阿久津といちゃついいてるなんて。許せない!」
「んだよ。てめぇの方が先に浮気したんだろうが! この変態!!」
キッと睨み返してやると、すんげぇ形相で俺に迫ってくる。
「僕がいつ浮気したって?」
「今だって、泰造のおっさんとイイコトしてきたんだろ? 寄るんじゃねぇよ」
「「は?」」
泣きそうになるのをグッと堪えていると、阿久津と寿也の間の抜けた声が重なった。
「さ、佐藤……お前、そんな趣味が」
「そうなんだ。トレーニングルームであのおっさん喘いで……」
「ち、ちょっ、なに誤解してるんだ」
「なにを誤解してるってんだよ。俺は確かにこの耳で聞いたぜ! 世にも恐ろしい声を」
思い出しても背筋がゾクゾクするぜ。
「そんなもん、聞いたら、そりゃ泣きたくもなるよなぁ」
気の毒に、と阿久津が呟く。
「だから、誤解だって言ってるじゃないか!」
「なにがどう誤解なんだよ?」
俺がそう聞くと、寿也は盛大なため息をついた。
「僕と吾郎君の関係をこの間見ちゃったらしくって、口止め料の代わりに、1週間マッサージさせられてただけだよ……」
「……は?」
マッサージ!?
「だ、だって寿、いつも何処行くんだって聞いても教えてくれなかったじゃねぇか」
「教えたら話がややこしくなると思ったからさ。全く、僕が好きなのは誰なのか一番よく知ってるだろ?」
なぁんだ、そっか
「だよなぁ。お前がオカマに走るわけねぇよな」
「そうだよ。僕には吾郎君しか居ないんだから」
そっと肩を抱かれると、今までのもやもやが嘘みたいに晴れて行くのを感じた。
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