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「おっと、アブねぇなっ!」

ドンッと誰かにぶつかって、文句を言われた。

だけど、明るく笑い飛ばす気力もなく、とりあえず謝ってみた。


「悪い、ちょっとボーっとしてたから」

そのまま横を通り過ぎようとしたら肩を掴まれた。

「んだよ」

「お前、変だぞ……悩み事か? 俺様でよかったら聞いてやるぜ?」

いつもなら変な顔近づけてくんなよ。とか思う阿久津の顔が、今夜ばかりは天使みたいに見えちまって、とりあえず言葉に甘えて相談することにした。

誰かに聞いてもらわねぇと、おかしくなりそうだったからな。





「で、一体どうしたってんだよ?」

「……」

「なんだぁ? らしくねぇぞ、お前」

談話室のソファに並んで座り、顔を覗き込まれて俺は言葉に詰まった。

話したいけど、なにをどう話していいのかわかんねぇ。

そのうちに胸がギューッと締め付けられるように苦しくなって涙がこみ上げてきた。

「なんだかよくわからねぇが、泣きたきゃ泣けよ」

「ウッウッ阿久津ぅ、お前いいヤツなんだなぁ」

「ハッハッハッ今頃気がつきやがって。俺の魅力に惚れんなよ?」

肩を抱き寄せられて、我慢してきたものが堰を切ったようにあふれ出して、俺は阿久津の肩にしがみ付いた。

その時だった。


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