「つか、はぐらかしてねぇし。 此処には日本代表の面子が揃ってんだぜ? 親父も居るし……そんな中で答えられっかっての」
確かに周囲には日本代表として戦っている仲間たちがいる。
彼らの目には、いつも三人でつるんで楽しそうにしているようにしか見えないのだろうが。
まさか吾郎を巡ってバトルしているなど想像もしないだろう。
「大丈夫だ。今更そんな細かい事を気にする俺たちじゃない」
「そうそう。 吾郎くんが好きだって何度も言ってるから周りも解ってると思うよ」
「俺が気になるんだよっ!」
どうしてそんな恥ずかしい事が堂々と言えるのか。
唖然とする吾郎に二人はどちらを選ぶのかと迫ってくる。
「〜〜っあーっもう面倒くせぇっ! あのなぁ俺には他に好きな奴がいるんだよ。 だからどっちかを選ぶなんてできねぇの。わかったか?」
遂に考えるのも二人を相手にするのも面倒になって口から出任せを言うと、寿也と眉村はその場にピキッと凍りついた。
「ちょっ、吾郎くんそんなの初耳なんだけど」
あからさまに動揺を見せる寿也の様子が可笑しくて、吾郎はフンッと鼻を鳴らす。
「そりゃそうだろ。今まで誰にも言った事無かったからな」
「それはどういう奴なんだ?」
いつもは表情の少ない眉村ですら顔色を変えて尋ねてくるので、吹き出しそうになるのを必死に堪えてでっち上げの人物像を思い浮かべる。
「そうだな……なんつーか……」
「hey! シゲノ」
「!?」
なんと言おうかと考えていた矢先、後ろから声を掛けられた。
一斉にそちらを振り返ると、其処には私服姿のキーンが居て吾郎は目を丸くした。
「な、何でお前がこんなとこに居るんだよ!?」
「ダチが此処で働いてるんだ。久しぶりに会いたいって呼ばれて……今帰るとこだ」
「そっか。 まさかこんなとこで会えるなんてな」
「あ、あの〜……吾郎くん、彼は?」
突然現れたキーンと親しげに話し始めた吾郎に戸惑いながら声を掛ける。
「コイツか? コイツは――」
寿也達の方へ向き直るとキーンを紹介しようとして良い事を思いつきにやりと笑った。
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