海堂編

LoveSick


1月になり、吾郎は無理やり英毅に無理を言って特別にバッティングピッチャーとして代表チームの合宿へ参加させてもらうことになった。

沖縄へ飛び、祝賀パーティに変装してこっそり潜入。

そこに、スーツ姿の眉村を発見! 声を掛けた。

「お前、なんでここに?」

わけを話すと、眉村は驚きを隠せない様子で目を見開き吾郎をジッと見つめた。

「まぁ、そう言うわけだから、よろしくな」

「よろしくって、お前」

呆れ顔の眉村。

相変わらずの吾郎節に戸惑いを隠しきれない。

と、その時背後から京四郎が眉村に声を掛けてきた。

身バレするのを恐れ隠れようとした吾郎だったが、京四郎の目を誤魔化せるはずも無くあっさりと正体を暴かれてしまう。

ならば丁度好いやと、バッティングピッチャーとして、フリーバッティングをしてみないかと申し出たがあっさりと断られ、吾郎は軽く凹んだ。

京四郎の有無を言わせぬオーラに圧倒されて、何も言えなくなってしまった吾郎の肩を眉村はポンと叩いた。

「まぁ、しかたないだろ。そう落ち込むな」

「……」

落ち込んでいるのか、黙ったままの吾郎に眉村は困った顔をした。

そういえば、彼と会うのは1年ぶりか。

アメリカでの活躍はネットでチェックしていたがまさか、代表合宿であえるとは夢にも思わず不謹慎にも、嬉しくなった。

「バッティングピッチャーってことは、当然俺の相手もしてくれるんだよな」

「ん? ああ。当たり前だろ」

吾郎の言葉に、眉村がふっと笑みを零す。

「あんだよ。随分嬉しそうだな」

「そう言う風に見えるのか?」

「見える! 鼻がヒクヒクと動いてるぜ」

ニッと笑い鼻を突付かれ、眉村は苦笑した。

去年けじめをつけた筈の思いが、じわりと頭を擡げ、懐かしい甘酸っぱい気持ちが広がってゆく。

一年前と全く変わらない笑顔を見ていると不思議と気分が高揚した。

「どうした? なんか俺の顔についてるのか?」

「……っ」

真っ直ぐに視線があい弾かれたように顔を上げた。

眉村は、いきなり吾郎の腕を掴むと会場の外へ向かって歩き出した。

「お、おいっ! どうしたんだよ、一体」

吾郎はわけもわからぬまま腕を引かれ眉村に引きずられるようにしてついてゆく。

「会場抜け出してきちまっていいのか?」

どんどん人気の無い所に入ってゆく眉村に尋ねると、突然その動きを止めた。

そして――。

モドル/ススム




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